遺産相続 手続、流れ、必要書類について相続の専門家がわかりやすく解説


遺産相続の手続 NPO法人えがおで相続を

相続が発生すると、大切な方を亡くされた悲しみの中、亡くなられた人が所有していた土地や建物、預貯金、株式などの財産の名義変更、所得税の準確定申告、相続税の申告など様々な手続きをしなければなりません。手続きの中には期限が定められているもの(相続放棄、準確定申告、相続税申告)もありますので、それぞれの手続きについて必要書類、提出先、期限などを確認しながら慎重に進めていくことが必要となります。
ここでは、それぞれの遺産相続の手続きの流れや注意点を確認していきたいと思います。

  1. 遺産相続とは
  2. 遺産相続 手続きの流れ
  3. 遺産相続 遺言書の確認
  4. 遺産相続 戸籍謄本の取得
  5. 遺産相続 相続人の確定
  6. 遺産相続 財産の調査
  7. 遺産相続 相続放棄・限定承認
  8. 準確定申告
  9. 遺産分割協議
  10. 相続財産(土地、建物、銀行預金など)の名義変更
  11. 相続税の申告

1.遺産相続とは

遺産相続とは、亡くなられた人の財産を配偶者や子どもなどに受け継ぐことをいいます。遺産を受け継ぐことのできる人は、民法により配偶者、子、子どもがいない場合の父母・祖父の直系尊属、子どもも直系尊属もいない場合の兄弟姉妹及び子や兄弟姉妹がすでに死亡している場合の孫や甥姪の「法定相続人」が定められています。

遺産相続では、誰が法定相続人になるのかという「相続人の確定」と受け継ぐ財産はどのようなものかという「相続財産の調査」が重要となりますので、十分に確認しながら手続きを進めていくことが必要となります。

2.遺産相続 手続きの流れ

遺産相続 手続きを進める際の注意点

相続手続きの中には、相続人に多額の負債がある場合などに行う「相続放棄」や「限定承認」の手続き(相続開始を知った時から3カ月以内に裁判所へ申立)また、亡くなった方に事業所得や不動産所得がある場合の「準確定申告」(相続開始を知った時から4カ月以内に税務署への申告)、相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合の「相続税申告」(相続開始を知った時から10カ月以内に税務署への申告)など期限が定められている手続きがありますので、該当するかどうかを確認しながら、手続き進めることが必要です。

また、相続手続きはそれぞれ時間がかかるものが多いので遺言書の確認、相続財産の調査、戸籍謄本の取得などは同時進行で進めていくことをお勧めいたします。

3.遺産相続 遺言書の確認

3-1.遺言の有無の調査

遺言がある場合は、原則として遺言に基づいて遺産相続の手続きを行います。

遺言の有無によって相続手続きが変わりますので、遺言があるかどうかが重要となります。遺言を探すにあたり、遺言の種類や遺言の探し方について確認しましょう。

3-2.遺言の種類

遺言は主なものとして、公証役場で作成した公正証書遺言または亡くなった方自身が書いた自筆証書遺言があります。自筆証書遺言は、封筒にほかんされている場合が多いですが、遺産相続手続きに使用する為には、家庭裁判所の検認の手続きを行うことが必要となります。

3-3.家庭裁判所の検認とは

自筆証書遺言の保管者や発見者は、家庭裁判所へ遺言書の検認手続の申立をして、遺言書は相続人全員の立会いのもと開封することが必要です。検認とは、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

また、封印がされている遺言書を事前に開封すると5万円以下の過料に処せられる場合がありますので、遺言書の開封は家庭裁判所で行いましょう。

3-4.遺言書の探し方

遺言があるということを聞いていなかった場合や保管場所を知らされていない場合は、自宅、事務所、入院先の病院、入所していた施設、銀行の貸金庫などをよく探して遺言書の有無を確認する必要があります。
また、事業を行っていた場合などは、懇意にしていた税理士や弁護士に預けている場合もあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。

4.遺産相続 戸籍謄本の取得

4-1.戸籍謄本の取得方法

まずは亡くなった方の死亡記載のある戸籍謄本を取得し、取得した戸籍からさかのぼってその前に作られた戸籍を順次取得していきます。
戸籍の取り寄せが難しい場合などは、戸籍の取り寄せを行政書士や司法書士などの専門家に依頼することもできます。

4-2.相続手続きに必要な戸籍

戸籍は「戸籍法の改正」、「転籍」、「婚姻」、「離婚」など様々な理由で新たに作られますが、相続手続きに必要な戸籍は、亡くなった方の「出生から死亡までのすべての戸籍」と相続全員の現在の戸籍謄本が必要となります。
「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」を取得することで、亡くなった方の父母は誰と誰で、兄弟が何人いるか、誰と結婚したか、子供が何人いるか、いつ亡くなったかといったことが分かり、相続人を確定することができます。

4-3.戸籍から正確な相続人を確定する

不動産、預金、株式などの相続手続きには、被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本が必要な場合がほとんどです。
また、相続人の誰も知らない子どもがいるようなケースもありますので、戸籍から正確な相続人を確定することが特に重要となります。

4-4.戸籍謄本を取得する際の注意事項

●相続人がすでに死亡している(代襲相続)の場合

すでに死亡している相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本も必要となります。

●相続人が兄弟姉妹の場合

兄弟姉妹を確定する(両親に他に子がいないことを証明する)必要があるため、「両親の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」も必要となります。
公正証書遺言がある場合、亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本と財産を引き継ぐ方の戸籍謄本のみ取得すれば足りるという手続きもありますので、手続き先に確認してみましょう。

5.遺産相続 相続人の確定

取得した戸籍謄本をもとに誰が法定相続人となるかを調査します。特に亡くなった方が過去に離婚している場合の子どもの有無や養子縁組のしていないかなどに注意しながら確認します。

遺産分割協議に参加する必要のある法定相続人を除いて行った協議は無効となるので相続人の確定は、間違いのないように行いましょう。

6.遺産相続 財産の調査

6-1.相続手続きが必要な財産の調査

相続手続きをもれなく行うためには、亡くなった方の財産にどのようなものがあるかを調査することが必要です。財産の調査は、時間がかかる戸籍謄本の取得の手続きと並行して行うとよいでしょう。

調査が必要な財産は預貯金、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金、ローンなどのマイナスの財産も含みます。これらをすべてピックアップしてリスト(財産目録)を作るとよいでしょう。

6-2.財産の調査でチェックするポイント

自宅など生活の拠点となっていた場所

書斎の机、タンスの引き出し、書棚、金庫、仏壇の近くなどに不動産の権利証、遺言書、預金通帳、株券、証書、エンディングノートなどを保管していることがあります。

郵便物

銀行や保険会社からの郵便物、毎年5月頃に市区町村から送られてくる固定資産税納税通知書など郵便物から取引のある金融機関や不動産の所有について分かる場合があります。

預金通帳

預金残高だけでなく、預金通帳の入出金の記録から、保険の加入状況、株や債券の保有、借入れ、ローンなどについて確認します。

登記事項証明書

不動産の所有が分かっている場合は法務局で登記事項証明書を取得すれば、不動産の詳細と抵当権などの担保権の情報から借り入れの情報が得られます。

名寄帳

市区町村役場で名寄帳を閲覧することで亡くなった方がその市区町村で所有していた不動産を確認することができます。

7.遺産相続 相続放棄・限定承認

7-1.相続放棄とは

相続財産の調査の結果、相続する財産が少なくマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄の手続きを検討しましょう。
相続開始を知った時から3か月以内に相続放棄の手続きを行うことによって、プラスの財産を含め、亡くなった方の財産を一切相続しないこととなります。その結果として、亡くなった方の借金を引き継がないことが可能になります。
また、亡くなった方が連帯保証人になっている場合などの保証債務も引き継がなくてよくなります。ただし、後日、財産が見つかった場合でも、原則として、相続放棄を撤回することができませんので、慎重に検討することが必要です。

7-2.次順位の相続人が相続人となる

相続放棄をすると最初から相続人ではなかったとみなされるため代襲相続も起こりません。その結果、子が相続放棄をすると次順位の相続人(祖父母、兄弟姉妹など)が相続人となります。
新たに相続人となった次順位の相続人も期限内に相続放棄をする必要が生じてきます。相続人間 (兄弟姉妹や親戚間) の関係にもよりますが、トラブル防止のためにも、次順位の相続人へ相続放棄をする旨を伝えてあげるとよいでしょう。

7-3.限定承認とは

負債額が不明で放棄するかどうか決められないが、相続財産のうちで負債や遺贈を弁済してもなお余りがあれば,それを相続するという方法です。

限定承認は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に相続人全員で行う必要があり、相続人のうち一人でも相続する人がいればできません。また手続きが複雑なため、専門家にご相談することをお勧めします。

8.準確定申告

亡くなった方に事業所得、不動産所得、不動産の譲渡所得等がある場合は、
相続開始があったことを知った日から4カ月以内に所得税の準確定申告をする必要があります。

9.遺産分割協議

遺言書が残されてなく、相続放棄・限定承認をしなかった場合は、相続人全員が参加して、遺産分割協議を行い誰にどのように財産を受け継ぐかを決定します。一人でも欠けてしまった場合は無効になりますので、注意が必要です。

また、遺言書が残されている場合でも、相続人全員の合意で遺産分割協議を行えば、遺言と異なる内容での遺産分割協議も可能とされています。

9-1.遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書 書き方2 NPO法人えがおで相続を

遺産分割協議がまとまったら、遺産を相続人がどのように相続するかを記載した遺産分割協議書し、相続人全員が署名し、実印で捺印します。その後の名義変更の手続きに使用しますので、不動産の表示、金融資産の表示等、間違いのないよう作成する必要があります。自信のない方は専門家に作成を依頼することをお勧めいたします。

9-2.遺産分割の方法

遺産分割は相続全員で行う必要がありますが、その分割の方法は大きく分けて4つあります。

現物分割

A.土地は長男に相続し、B土地は長女に相続するというように遺産そのものを現物(そのまま)で分ける方法です。
現物分割では各相続人の相続分をきっかり分けることは難しいため、相続人の間で相続した金額の格差が大きい場合は、一部の資産を売却してその代金で調整したり、他の相続人よりも多く相続した人が自己資金で調整(代償分割)したりします。

代償分割

土地や建物の不動産を長男が取得する代わりに、二男と三男に500万円ずつ支払うなど、相続分以上の財産を取得する代償として他の相続人に自己の財産(金銭等)を交付する方法です。
遺産の大部分が不動産である場合で、その他の財産が他の相続人の相続分に足りない場合などに利用されますが、代償金の算定など慎重に検討する必要があります。

換価分割

遺産の大部分が不動産であり、代償金を払えない場合や相続税の納税資金を確保する場合などに相続財産を売却し、現金に換えて分割する方法です。
現物分割では難しい各相続人の法定相続分を、きっかり分割したい場合などは便利ですが、この場合は、売却までに要する期間、処分費用、譲渡取得税などを考慮する必要があります。

共有分割

相続財産を複数の相続人が共有で相続する方法です。一見、公平な分割方法だと思われるかもしれませんが、不動産を共有物分割した場合は、その後は、共有者全員の同意がないと、売却や建て替えなどをすることができず、また共有者の1人が死亡すると、その持分が相続人に受け継がれるため、時間の経過とともに共有者が増加するおそれがありまので、不動産の共有分割をする場合は、慎重に検討してから進めることをお勧めいたします。

10.相続財産(土地、建物、銀行預金など)の名義変更

相続財産の名義変更

相続財産(土地、建物、銀行預金など)の名義変更には期限はありませんが、遺産分割協議がまとまったら、速やかに手続きをしましょう。
手続き方法は不動産であれば法務局、金融資産であれば銀行や証券会社など、手続き先や方法が異なりますので、事前に確認の上、手続きを進めます。また、法務局や金融機関などは平日しか空いておりませんので、お時間のない方、お身体が不自由な方、慣れない手続きに不安がある方などは、司法書士や行政書士などの専門家に依頼することをお勧めいたします。

11.相続税の申告

遺産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の人数)を超える方は、相続開始を知った時から10カ月以内に税務署に相続税の申告をする必要があります。
すべての方が対象となるものではありませんが、相続税の申告の必要があるかどうかは、相続財産の調査、相続人の確定と並行して確認しておきます。また、相続財産の評価や相続税の計算等は専門的な知識が必要となりますので、手続きに不安がある方は税理士に依頼することをお勧めいたします。

まとめ

ここまで確認してきたように、相続手続きは、亡くなった方の財産に応じて、土地や建物、預貯金、株式などの財産の名義変更、所得税の準確定申告、相続税の申告など様々な手続きがあります。

手続きを進めるにあたって、手続きの期限の確認、書類の収集、相続人間での調整など、同時進行で慎重に進めていくことが必要となります。ご自身で進めるのが心配な場合は、専門家に相談しながら進めると良いでしょう。

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